本記事では2022年9月23日に発売された第2世代の「Apple AirPods Pro」のファーストインプレッションをお届けする。見た目こそはあまり変化が無いものの、中身はしっかり進化していて3年ほど初代「AirPods Pro」を愛用してきた筆者の期待を上回るものだった。
約3年ぶりに第2世代へと進化を遂げたAppleのワイヤレスイヤホン『AirPods Pro(第2世代)』(以下、AirPods Pro2)。
高い次元でまとまったノイズキャンセル機能や外音取り込み機能、空間オーディオなど、もともとの性能が良いだけにこれ以上どう進化するのか気になっていたが、運良く筆者の手元にも発売日当日に届いたので早速性能がどう進化しているのかを検証してみた。
結論から言うと、音質や機能それぞれの側面で性能が全体的に1.5倍くらい引き上げられたような印象を受けた。
音質やノイズキャンセル機能だけでなく、MagSafe対応の充電器で充電できるようになっている点など、日常運用においても非常に使い勝手の良いものに仕上がっており、正常進化を遂げたと言ってよいだろう。
それでは3年間ほぼ毎日AirPods Proを使い続けて来た筆者が、『AirPods Pro2』のファーストインプレッションをお伝えしていく。
AirPods Pro 第2世代の概要
スペック
初代からの変化点を太字で示している。
第2世代 | 初代 | |
---|---|---|
オーディオテクノロジー | パーソナライズされた空間オーディオと ダイナミックヘッドトラッキング | パーソナライズされた空間オーディオと ダイナミックヘッドトラッキング |
ノイズキャンセル機能 | アクティブノイズキャンセリング 適応型環境音除去 | アクティブノイズキャンセリング |
外音取り込み機能 | 外部音取り込みモード | 外部音取り込みモード |
コントロール | 感圧センサー タッチコントロール | 感圧センサー |
通信機能 | Bluetooth 5.3 | Bluetooth 5.0 |
体感耐水性能 | 耐汗耐水性能(IPX4) | 耐汗耐水性能(IPX4) |
チップ | H2ヘッドフォンチップ | H1ヘッドフォンチップ |
音声アシスタント | Siri | Siri |
バッテリー駆動時間 | イヤホン単体:最大6時間 ケース併用:最大30時間 | イヤホン単体:最大5時間 ケース併用:最大24時間 |
ケース | MagSafe充電器、Apple Watchの充電器、 Qi規格の充電器、Lightningコネクタに対応 | Qi規格の充電器とLightningコネクタに対応 |
イヤホンのサイズと重量 | 高さ:30.9 mm 幅:21.8 mm 厚さ:24.0 mm 重量: 5.3 g | 高さ:30.9 mm 幅:21.8 mm 厚さ:24.0 mm 重量:5.4 g |
ケースのサイズと重量 | 高さ:45.2 mm 幅:60.6 mm 厚さ:21.7 mm 重量:50.8 g | 高さ:45.2 mm 幅:60.6 mm 厚さ:21.7 mm 重量:45.6 g |
同梱品 | AirPods Pro 第2世代 スピーカーを搭載したストラップループ付きMagSafe充電ケース シリコーン製イヤーチップ(4サイズ:XS、S、M、L) Lightning – USB-Cケーブル | AirPods Pro 第1世代 Wireless Charging Case シリコーン製イヤーチップ(3サイズ:S、M、L) Lightning – USB-Cケーブル |
機能面で強化されたポイントはタッチコントロールに対応し、イヤホン単体で音量調整が可能になったことと、充電ケースがかなりグレードアップしていることが大きい。
また、現行モデルはケースがMagSafe充電ケースとなり、端子がUSB-Cに変更となっている。(本記事の画像は全て第2世代の初期型モデルとなる。)
日常運用における利便性が格段に上がるはずだ。
外観
イヤホンの画像が変わっただけで、初代なのか第2世代なのかほぼ見分けが付かない外箱。
- AirPods Pro 第2世代 イヤホン本体
- 専用充電ケース
- イヤーチップ4種類(XS、S、M(本体に装着済み)、L )
- 充電ケーブル(USB Type-C to Linhtningケーブル)
- 取扱説明書等
基本的な構成は初代と変わらない。しかし、細かい部分でグレードアップされている。
イヤーチップはXSサイズが追加され、もともとイヤホンに装着されているMサイズを加えると合計4種類に増えている。
ノイズキャンセルイヤホンの性能をフルに発揮するためには、耳の大きさに合ったイヤーチップを正しく装着することが非常に大事なので、この改良点は嬉しいところ。
続いてケース。AirPods Pro 第2世代の進化ポイントにおいて、ケースの進化は占める割合が大きい。
充電ポートは相変わらずLightning端子だが、新しくスピーカーが搭載された。これにより充電開始時に「チーン」と音が鳴り正しく給電されたか判別しやすくなったり、「探す」アプリを使って音を鳴らす事で紛失時に探しやすくなった。
記事後半で探す時のサウンドを聞けるので参考にしてほしい。
初代のケースと比較。スピーカーありなしで見分けることができる。
右側面には新たにストラップホールが追加された。
ケースを落としてしまうのが不安な人は、ストラップを付けてかばんに括り付けることで落下を防いだり、かばんの中で探しやすくなったり、運用の幅が広がる。
Appleストアで販売されているIncaseのストラップ(通称:信者のストラップ)を装着した状態。
試しに装着して運用しているが、筆者にとってのメリットはかばんから取り出すときにケースよりも先にストラップに手が当たった場合にストラップを持って取り出せるようになったことくらいで、現時点では正直あまり変化がなかった。今後何かの役に立ってくれる事を期待しつつ暫く使ってみようと思う。
ケースの大きさやイヤホン本体の形状などは初代と全く一緒。
それだけ初代のデザインが完成されているものだったと言っても過言ではないだろう。
イヤホン本体もセンサーやマイク位置が変わっているだけで形状は初代と全く同じ。
短いうどん形状もそのままである。
操作ボタンの位置や大きさも全く同じ。
左が初代、右が第2世代。イヤホンのセンサー位置やマイクの大きさが変わっているくらいでほとんど見分けが付かない。
初代との比較
低音域がパワフルに
初代の音を聴いた直後に第2世代の音を聴いてみたのだが、明らかに音質が進化している。
特に低音域の力強さが増しているのと、空間オーディオの音の広がりがより広く感じられるようになった。
有線イヤホンやヘッドホンなどとも聴き比べてみたが、Appleはワイヤレスであることの音質面での弱点を空間オーディオという独自の音響技術を使って補おうとしており、筆者としては非常に気持ちの良い音に感じられた。
空間オーディオに対応している楽曲を聴いた感じは、音が少し離れたところから聴こえてくるような感覚で、「空間オーディオ」の名前の通り、少し広めの空間で実際にアーティストが前方で歌っているような効果を体感することができる。
本格的なオーディオマニアにとっては邪道とされるかもしれないが、Appleの目指すところはあくまで「ユーザー体験をどのように良くするか」であり、それを十分満たしてくれる音質であると感じた。
ノイズキャンセル性能は1.5倍向上
これも初代と比較をしてみたが、確かに性能は向上していた。
カフェでよく聞こえる食器がぶつかり合うようなカチャカチャという高音域の雑音についてはあまり変化は感じられなかったが、低音〜中音域のノイズはかなり低減されるようになっていた。
試しにスピーカーから飛行機に搭乗した際に聞こえるノイズを再生し、どのくらい騒音がカットされるか聴き比べてみたところ、初代では除去しきれなかったノイズが第2世代では綺麗に除去された。ノイズの音量を上げていけば少しずつノイズが聴こえてくるようになるが、ゴゴゴという低音〜中音域のノイズはかなり低減された。
結論としては低音〜中音域のノイズキャンセル性能が約1.5倍になったような印象である。
ついでに生のドラム演奏のような爆音の環境下でテストしてみた。
が、さすがにここまでくるとノイズのレベルを超えており、初代と聴き比べても差を感じ取れるほどの違いは感じなかった。
外音取り込みはより自然に
一言でいうと、「より自然になった」という感じ。
自分の喋る声もかなり自然に聞こえるので、イヤホンを装着したまま買い物をする時など、店員さんとの会話もかなりしやすいはずだ。
初代でも基本性能が良かっただけに、どこまで性能が上がるのがは筆者としても非常に気になっていたが、音質やノイズキャンセル機能、外音取り込み機能も全体的に1.5倍くらい性能が底上げされているような印象を受けた。
MagSafe対応になって充電が便利に
これはちょっと笑ってしまうようなアップデートだが、充電がかなり便利になった。
MagSafe対応の充電器やApple Watchの充電器が利用可能となり、空いている充電スペースが有効活用できるようになった。
初めて使ったときはAppleっぽくない機能拡張だなと思わず頬の筋肉が緩んでしまったのだが、使い出すととても便利でよく初代から大きさを変えずにここまでの機能を盛り込んだなと関心してしまった。
イヤホン単体で音量調整が可能に
初代ではできなかったイヤホン単体での音量調整が可能になった。
感圧センサー部分の形状は全く一緒なのだが、ここにタッチセンサーが追加されていて、上下にスライドさせることで音量調整ができるようになっている。
一回スライドさせるごとに1段階ほど音量が変化するようになっていて、操作するたびに「コッ」という電子音が聞こえるので正しく操作できたのか把握できる。
Apple Watchのダイヤル操作でも音量調整はできるのだが、筆者は普段スーツ姿でお客様先を回る営業マンなので、平日日中は機械式腕時計を付けていてそれができない。
通勤途中に音楽を聞く時はいつもiPhoneを操作して音量調整をしていたが、今後はそれをしなくても良くなるのは非常に嬉しい進化点だ。
紛失しても探しやすくなった
ケースに新しくスピーカーが搭載されたことで、「探す」アプリを使って捜索がしやすくなった。
比較的小さなデバイスなので、どこにしまったか分からなくなる事がよくあるが、iPhoneから遠隔で音を鳴らせるので脱いだ衣類やかばんの奥底に紛れ込んだAirPods Proを救出できる。
「探す」アプリでサウンドを再生したときの音
これで時間のない朝でもその日1日を音楽なしで過ごす羽目になったり、したくもない洗濯をしてピカピカのAirPodsのモックアップを生産することもなくなるだろう。
まとめ
AirPods Pro 第2世代は、初代と比較して全方位で1.5倍くらい性能が良くなったワイヤレスイヤホンだと感じた。
筆者がAirPods Proをよく使うシチュエーションとしては、通勤電車の中やカフェで作業する際のBGM用として使うことが約8割を占めている。
そのためノイズキャンセル性能が向上したことは筆者にとっては非常に嬉しいことだし、MagSafe対応充電器が使えるようになったこともAppleデバイスに囲まれた日常生活において役立ってくれることだろう。
初代AirPods Proが発売されたのが2019年10月30日で現時点で約3年。
発売直後に購入した筆者愛用のAirPods Pro第1世代もバッテリーが消耗してきたのでそろそろ買い替えか?と思っていたジャストなタイミングで発売された第2世代。
円安も重なって約4万円という出費は非常に痛いが、またこれからの3年間、Appleが考える音楽体験を最大限に享受するためには購入しない手はなかった。
しかし、Apple信者でない普通の人が約4万円を出す価値があるか?と問われると、100%首を縦に振るつもりは全くない。なぜなら4万円も出せばもっと音質の良いワイヤレスイヤホンは山ほどあるし、もっとパワフルに聴けるドライバー径の大きいオーバーヘッド型のワイヤレスヘッドホンも選り取り見取りだ。
まんまとAppleの術中にハマっている筆者だが、iPhone 14 Proから始まった新製品ラッシュのおかげで、当然家族からはかなり白い目で見られている。
これからしばらくは家族サービスに専念することになるだろう。
- 音質やノイズキャンセル、外音取り込み性能が初代と比較して約1.5倍に向上(筆者主観)
- MagSafe充電器で充電できるのがかなり便利
- Apple信者でも買うのを躊躇してしまう高額な値段
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