ゲーミングチェアでおなじみのAKRACINGがなんとモニターをリリース!それが27インチ4Kモニター『OL2701』だ。世界初RGB印刷方式の国産有機ELパネルを採用し、驚異的なスペックを誇る。色域やコントラストの実測値も液晶モニターとは比較にならないほどのモンスター級モニターで、美しい映像を楽しめる。ただ、数値だけでは判断が難しいということを学んだ製品でもあった。
「これを漆黒の黒と表現してよいのだろうか…。」
これが筆者が初めて『OL2701』を見たときに出た言葉だった。
しかしこのモニター、スペックだけはモンスターである。
これは『OL2701』の明るさとコントラスト比を筆者が持っている計測ツールで測定した結果なのだが、今まで液晶パネルを採用したモニターばかりレビューしてきた筆者にとって、これは衝撃的な数値であった。
明るさ100%でのコントラスト比がなんと13,020!
こんな数値は今まで見たことがない。しかも黒の数値が明るさ0%と100%で全く変化がないところも驚きを隠せない。(構造上有機ELはバックライト方式ではないので当たり前なのだが…)
さらにモニターが表現可能な色の範囲を測定機器を使って実際に測定した結果、AdobeRGBカバー率が100%という値を示した。
AdobeRGBという規格は色の範囲が非常に広く、モニター側にとっては非常に厳しい色域なのだが、筆者はこの値が100%を示すモニターを初めて見た。
ただし同時に「モニターはスペックだけじゃないんだな…」と、実物を見てみないとわからない部分も多い事を初めて私に知らしめてくれた製品でもあった。
結論から申し上げると、明るい場所でこのモニターを使おうと思っている人は一旦踏みとどまって欲しい。このモニターは使う環境を選ぶ。
私がこのモニターを約2週間使ってみて感じたポイントは以下の2点。
- このモニターは夜間や暗めの部屋で使う場合にその性能をフルに発揮する
- 逆に日中や明るい場所で使うと、感動が半減してしまう
ではなぜスペックは凄いのに使う環境を選んでしまうのか。本記事で解説していくので是非参考にして欲しい。
- 27インチ 4K 有機ELモニター
- 石川県能美市で生産された世界初RGB印刷方式有機ELパネルを採用
- 0.1msの応答速度
- 驚異の色域。実測値でAdobeRGBカバー率100%
- カタログスペックではコントラスト比がなんと1,000,000:1
- 3.52kgという軽さ
- 2W x 2 のステレオスピーカー内蔵
本記事はTEKWIND様よりサンプル品を貸与いただき作成しているが、記事の内容には一切指示や修正等は受けていない。
AKRACING OL2701 の概要
主なスペック
『OL2701』の主なスペックはこちら。
ディスプレイサイズ | 27型ワイド |
パネル種類 | 有機EL(RGB印刷方式) |
表面仕様 | ノングレア(非光沢) |
解像度 | UHD (3840 x 2160) |
リフレッシュレート | 60Hz |
輝度 | 540/250cd/㎡ (ピーク/フルスクリーン) |
応答速度 | 0.1ms (tr + tf) |
表示色 | 1.07G (10-bits) |
アスペクト比 | 16 : 9 |
コントラスト比 | 1,000,000 : 1 |
チルト角度 | 上下 : 上20°/下5° |
スウィベール | 左右 : 30° |
高さ調整 | 120mm |
VESA規格 | 100 x 100mm |
消費電力 | 使用時:60W スタンバイ:0.5W |
映像入力 | HDMI 2.0 x 2 / Display Port 1.4 x 1 / USB Type-C x 1(5W給電対応) |
音声出力 | 3.5mmステレオミニジャック |
スピーカー | 2W x 2 |
本体サイズ | 高さ:571 mm 幅:630 mm 奥行き:230 mm |
本体重量 | 5.47kg(スタンドなしで3.52kg) |
保証期間 | 1年保証 |
普通じゃないのがコントラスト比と輝度だ。
コントラスト比とは、黒と白の明るさの差を数値化したものだ。例えばコントラスト比1000:1というのは黒の表示を1としたとき、白にした時の明るさが1,000という事になる。この差が大きければ大きいほどメリハリのある映像になる。
今まで、液晶パネルを使ったモニターで筆者が体験した最高のコントラスト比が「Dell U3223QE」での2000:1である。私がメインで使用しているモニターがそれなのだが、この『OL2701』のコントラスト比は全く比べ物にならないほどのスペックを誇っている。黒を1としたとき、白は100万だ。
つまり黒はより黒く、白はより明るいということを表している。
外観と付属品
外観はあまり特徴がなく、どちらかというとシンプルな部類に入る。
背面のスタンド部分のみシルバーでちょっとしたアクセントになっている。
モニター部分のAKRACINGのロゴは塗装により表現されている。
配線通し用の穴はかなり大きめなので、ケーブルの取り回しは楽にできそうだ。
モニターの側面は面取りされたアルミのような金属で覆われており、高級感を演出している。
ベゼルはそこそこ太くベゼルレスとは呼べないが、モニター全体としてのバランスは悪くない。
AKRACINGと言えばゲーミングチェアのイメージが付きすぎていたが、ブランド多角化の第一弾がまさかモニターだとは思いもしなかった。しかも国産有機ELパネル採用のモンスタースペックモニターとは…。
右手でモニター背面を触ると電源ボタンや設定ボタンがある。
セキュリティーワイヤーを装着するためのケンジントンロックポートも搭載している。
ポート類はこのような配置。左から電源ポート、HDMI 2.0が2ポート、Display Port 1.4が1ポート、USB Type-Cが1ポート、USB Type-Aが2ポート、2.5mmイヤホンジャックとなっている。
スピーカーも内蔵しており、動画視聴なども楽しむことができる。音質はそれなりだが、搭載されていないのとは雲泥の差だ。
VESAの100 x 100に対応しているので、モニターアームを使って設置することも可能だ。
電源投入直後のADRACINGのロゴ。
ちなみに電源ONのときは右下のLEDが青色に点灯し、スリープ状態になるとオレンジに変化する。
付属のスタンドは高さ調整、左右のスイベル調整、そして上下のチルト角調整が搭載されている。
付属品には充実している。ケーブルはUSB Type-Cに加え、HDMIやDisplayPortケーブルも付属されている。
- 『OL2701』モニター本体
- スタンド支柱
- スタンド台座
- ネジ4本
- 電源アダプタと電源コード
- USB Type-Cケーブル
- HDMIケーブル
- DisplayPortケーブル
- 取り扱い説明書
スタンドはVESAマウントのネジ穴を使って固定する必要があるので少し面倒だが、モニター本体がとても軽いので難なく取り付けできた。
もちろんモニターアームを使ってデスクにクランプすることも可能だ。
27インチは筆者の経験上、120cm〜140cm幅のデスクに設置するとちょうど良いバランスになる。
大きさと重さ
モニターの大きさは、高さ:571 mm、幅:630 mm、奥行き:230 m。
重さはスタンド込みで5.47kg(スタンドなしで3.52kg)
27インチサイズにしては薄くて軽量なので、設置の自由度は高い。
設定メニュー
本体の各種設定は本体裏側にあるボタンで行う。
上からメニュー表示兼決定ボタン。プラスとマイナスボタン、戻るボタン、一番下が電源ボタンとなる。どのボタンも感触が同じで直接目視できないため、操作はしやすいとは言えない。
指で触りながら人差し指を一番上のボタンに合わせて小指がキャンセルボタンの位置に来るようにすればどのボタンかが判別できる。
設定できる項目はとても少なく、シンプルな構成になっている。普段触るのは明るさやコントラストがメインで、あとはDCRといって明るさをさらに1段階上げる機能ONOFFするくらいだろう。
このモニターを使う上で注意しなければならない設定が2つある。「DCR」と「カラーレンジ」だ。
「DCR」をオンにすると明るさがブーストされる。初期値ではOFFになっているのだが、明るさ100%でも足りない場合に便利だ。最初からONにしておけば明るさの調整幅が広がるのでおすすめだ。
「カラーレンジ」は色の階調範囲の設定なのだが、M1チップ搭載のMacで使う場合注意が必要だ。
Windowsで使う場合は問題ないのだが、M1 Macの仕様の一つとして外部モニターに出力されるカラーフォーマットが「YUVリミテッドレンジ」という通常の0〜255より狭い16〜235となっており、モニター側も「リミテッドレンジ」に合わせる必要がある。
自動で切り替わってくれれば問題ないのだが、「自動」にしていてもなぜか切り替わってくれないのでPC側とモニター側で不一致が発生し色味がくすんだ感じになってしまう。
これに気付かないとモニター本来の性能をフルに発揮できない状態で使い続けることになってしまうので、M1チップ搭載のMacで使用する場合は必ず手動で「リミテッドレンジ」に切り替えよう。
AKRACING OL2701 の特徴
AdobeRGBカバー率100% という驚異の色表現力
キャリブレーションツールを使って『OL2701』の色域を測定した結果が下記となる。
AKRACING OL2701 の色域測定結果
カラースペース | 色域カバー率 |
---|---|
sRGB | 100% |
NTSC | 98% |
AdobeRGB | 100% |
P3 | 94% |
少し赤色方向の表現力が弱いためDCI-P3カバー率が少し低めの94%となっているが、全体的な数値としては間違いなく筆者が今までレビューしてきたモニターの中でダントツ1位の数値だ。
AdobeRGBカバー率の実測値が100%のモニターは私は初めて見た。忠実な色を求めるプロの現場で使用されるべきモニターである。
実際の映像もひと目で色味がとても良いのがわかる。
海の青や植物の緑もかなり美しい。写真で見ても美しいのだが、4Kの高解像度で実際に動いている映像を間近で見るとその美しさに驚愕することだろう。
応答速度0.1msでブレの少ない映像を楽しめる
有機EL一般的な液晶パネルと比較して応答速度が0.1msと異常に早いのも特徴の一つ。
液晶パネルの最速クラスで、ゲーミングモニターをオーバードライブさせてやっと同じ0.1msというモデルが存在するが、こちらは標準で0.1ms。
そもそも映像を映し出す原理が違うのもあり、早い動きの映像でもブレの少ないキレのある映像が楽しめる。
本体が軽いので、設置や移動が楽にできる
有機ELパネルの特徴の一つが非常に薄く軽くできること。『OL2701』も横から見るとその薄さがわかる。
実物を手に取ってみても非常に軽い。これなら設置も楽だしモニターアームに取り付ける際もそんなに苦労することなく取り付けできるだろう。
デメリット
パネルが青いのが非常に残念
公式サイトには「漆黒の黒」という表現が使われているのだが、『OL2701』のパネルは筆者が見る限り、黒くない。青いのだ。これがこのモニター最大の欠点だと私は思う。
これを「漆黒の黒」とは私は到底表現できない。
日中の明るい場所で見たパネル面は、光が青く反射してしまっていてベゼル部分の黒さと比較すると全く黒くないのがわかる。
こちらはカーテンを閉めて部屋を暗くして撮影したパネル面。これなら黒と呼んで良いだろう。
他の液晶モニターとパネルの黒さを比較してみた。左が『OL2701』。明らかに青い。今まで多くの液晶モニターを見てきたが、パネル面を見て「青い」と感じたことはあまりないので、右側の黒が筆者の感じる「真っ黒」の基準だ。
置く位置によって光の反射の度合いが違うのでは?と言われるかもしれないので、左右を入れ替えて撮影したのがこちら。やはり結果は同じだ。
電源を入れたら黒さが増すようなものではないので(念の為電源を入れて確認済み)、これが一番黒い状態なのである。
液晶モニター版の「漆黒の黒」を自宅のメインモニターとして使っている筆者としては、有機ELの「漆黒の黒」がどれだけ黒いのか非常に楽しみにしていただけに、青みがかったパネルを見た瞬間に非常に残念な気持ちになってしまった。
記事冒頭で「漆黒の黒」と呼んでよいのか?と書いたのはこれが理由だ。
そのため『OL2701』は暗い部屋で使う場合にその感動を十分に堪能できるモニターであると筆者は結論づけた。
USB Type-C経由の電源供給は5W
『OL2701』はUSB Type-C映像入力にも対応しているのでPCとType-Cケーブルで接続できるのだが、モニター側からPCへ供給できる電力が5Wと非常に低く使用中にPCのバッテリーを消耗してしまう。
そもそもモニターの電源がACアダプターなので入力電圧自体が低いのが原因だ。
そのため、ケーブル1本運用が前提でモニター探しをしている方は注意が必要だ。
高額な値段
値段を見て驚いた読者の方も多いのではないかと思うがメーカー公式サイトによると2022年10月現在、想定売価が¥298,001(税込)となっている。
この価格は液晶も含むモニター全体で見ると一部のプロ向けモニターを除き最高級品クラスと言ってよいだろう。
まだあまり多くないPC用有機ELパネルかつ4Kということで、様々な理由があるのだと思うが我々一般ユーザーからしてみればおいそれと気軽に検討できる値段ではない。液晶モニターの性能も上がっているので価格差分の性能差は徐々に埋まりつつある。
しかもこの金額を出せるのであれば、もっと大型の有機ELを使った4KTVや5K2Kなどといった高解像度大画面液晶モニターなど、様々な選択肢が視野に入ってしまう。
ちなみにAppleの27インチ5Kモニター「Studio Display」は液晶だが12MPのカメラや空間オーディオ対応スピーカー、マイクなどを内蔵し、様々な機能が付いて2022年10月現在で219,800円(税込)からとなっている。さらにオールアルミ製のシンプルな外観は工業製品としての美しさも兼ね備えている。
何を重視するかは人それぞれだが、30万円分の満足度が得られるかは十分検討し納得した上でポチって欲しい。
AKRACING OL2701 のレビューまとめ
AKRACING初のモニター『OL2701』は国産の有機ELパネルを搭載した27インチ4Kモニターだ。
筆者の個人的な感想としては、青いパネルと高額な値段がデメリットだが、夜間あるいはパネルへの光の映り込みを抑えられる環境で使う場合にその本領をフルに発揮し、発色とキレが異常なほど美しい映像を楽しめるモニターだと感じた。
メリット | デメリット |
---|---|
AdobeRGBカバー率100% という驚異の色表現力 応答速度0.1msでブレの少ない映像を楽しめる 本体が軽いので、設置や移動が楽にできる | パネル自体の色が青く、漆黒の黒を感じにくい 約30万円という高額な値段 |
こんな方におすすめ
- 暗い部屋でモニターを使用することが多い。とにかく美しい色合いを楽しみたい
- AdobeRGB100%のモニターが必要なプロのクリエイターや企業
- AKRACINGファンの方
- 予算消化が必要な企業や自治体
はしかん評価
画質 | AdobeRGBカバー率100%の色表現力と相当速度0.1msのキレの良さはGood。パネルが青いのがかなり残念だった。 | |
音質 | 音質はそれなり。あることに意義がある。 | |
デザイン | デザインは至って普通。質感もプラスチッキーで30万円のモニターとしては高級感に欠ける。 | |
操作性 | 右側背面にある5つのボタンで操作を行う。慣れてしまえばボタンを手で探って操作できるが良いわけでもない。 | |
拡張性 | USB Type-C給電が5Wしか出ないのがちょっと残念だが、Type-CだけでなくHDMIが2ポート、DisplayPortも1ポート、USB HUB機能も内蔵し、抜け目なし。 | |
価格 | PCモニター用有機ELとしては頑張っているのかもしれないが、それでも躊躇してしまう価格設定。価格競争力はモニター界全体で見ると高くない。 |
- 暗い場所で使うと驚異的な映像を楽しめる
- 薄型軽量で設置や移動が楽
- 元のパネルが黒ではなく青いため、漆黒にならない
- Studio Displayを買ってもお釣りがくるほどの高額な値段
映像は確かに美しいしスペックも驚異的な数値を誇るモニターなのだが、スペックだけじゃないという事を知らしめてくれたモニターだった。
気になる方は是非家電量販店などで実機を見て欲しい。明るい映像は殆どの人が納得すると思うが、有機ELパネルの黒さやモニターの外観デザインが許容できるかをしっかり見極めよう。
筆者としては同社の次回作に是非期待したい思いだ。
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